カウパータイムスリップシリーズ第三弾

1990年
   どたどたと階段をのぼるセーラー服姿の大森由美子(15)。
   くるぶし丈の靴下。

   部屋の半分を二段ベッドが占めた四畳半。
   壁に貼られたボウイ「ラストギグス」のポスター。
   下の段のベッドに横手兼一(15)が腰掛けている。
   三個パックのプリンを差し出す由美子。
由美子「プリン食べる?」
   
   ベッドに腰掛けてプリンを食べている兼一と由美子。
由美子「ウチ、兄ちゃんがおるから、このパックのプリンがあってもいつも一個食べれるか、食べれんかなんよ」
兼一「今日は兄ちゃんはおらんの?」
由美子「うん・・・修学旅行」
   兼一、プリンを食べ終えて空の容器を床に置く。
由美子「もう一個いる?」
   とプリンの蓋を開けて兼一に渡す。
由美子「私にも一口ちょうだい」
   兼一、スプーンで掬ったプリンをゆっくりと由美子の口元に運ぶ。
   じゅるっとプリンを吸う由美子、そのまま兼一の胸元に顔を埋める。
兼一「な、なんか、こうやってプリン食べるのって、一杯のかけそばみたいやな」
   由美子、笑いながら顔を上げる。
兼一「俺、あの話にメチャクチャ感動した!」
   ぶっと吹き出す由美子。
由美子「ちょっと、一杯のかけそばって、作り話やないの?」
兼一「はあ?」
   顔をしかめる兼一。
兼一「お前何言っとん?   あんなええ人が嘘吐く訳ないやろ?」
由美子「テレビで観たんやもん、ほんまやって!」
兼一「馬鹿!    言ってええことと、わるいことがあるやろ!」
   と由美子を突き飛ばす。
由美子「なんでウチが馬鹿って言われんといけんのよ!」
兼一「ふざけんな・・・」
   と涙をぬぐう。
由美子「もしかして、親子でかけそば食べるとこ思い出して、ホロっと来たん?」
兼一「うるさい!」
   と鞄を持って部屋を出て行く。
   どかどかと階段を降りる音。

由美子「あの日以来、兼一とは口も聞かなくなってしまいました。
 そして、そのまま私達は卒業して別々の高校に進学したのです」



1995年
   防波堤沿いの道路を疾走するバイク。
   道路に猫が飛び出してくる。
   猫を避けて防波堤に突っ込むバイク。

由美子「兼一がバイクの事故で亡くなったことは、その年の冬に帰郷して初めて知りました」



2005年
   窓一面に夜景が広がるホテルの一室。
   窓際のテーブルでワインを飲む由美子(30)と杉村博之(32)。
杉村「そっか、年末年始はうちの別荘に一緒に行こうかと思ってたんだけどなー」
由美子「ごめんね、同窓会って今さらなんだけど・・・タイムカプセル掘り返すんだって」
杉村「同窓会って、中学生の頃のだよね?  当時の恋人なんかも来るわけ?」
由美子「えー、中学生の頃だよ?   恋人なんているわけないじゃなーい」
           安っぽくわらう由美子。

   校庭の隅の芝生に集まった男女。
   丈の短いワンピースにハイヒール等、着飾った女子のグループ。
   その中に由美子もいる。
   ジャージ姿で芝生を掘り返している加藤邦男(30)と吉村耕一(30)。
吉村「つーか、お前らそんな格好で来て、やる気あんのか?」
女子A「あるわよー」
加藤「やる気っつーか、浮気する気満々やろ!」
女子B「お前こそそれ、中学ん時のジャージやんか!」
   加藤のジャージの胸元に名前の刺繍。

   ボコボコに掘り返された芝生。
   土にまみれた一斗缶。
           一斗缶の中を覗く加藤。
   各々の手に持ったビニールの包みを懐かしそうに眺める女子達。
   由美子の手にもビニールの包み。
女子A「そういや、兼一君は何も入れんかったんかねー」
女子B「卒業前からなんかグレだしとったからねー」
女子A「由美子は覚えとる?」
   首を振る由美子。
加藤「あー、奥にまだあった!」
   はっとする由美子
   加藤が一斗缶の中から小ぶりのビニール袋を取り出す。
加藤「えっーと、中西、中西章太郎!」
中西「はいっ!」
   と頭が禿げ上がったスーツ姿の中西章太郎(30)が加藤に歩み寄る。
加藤「お前!   エロ西か?」
   不敵そうな笑みをたたえ、うなづく中西。
   加藤からビニール袋を受け取ると、中からフィルムケースを取り出し、カパっと開ける。
   と、あたりに強烈な異臭が漂う。
吉村「うわっ、なんや、この臭い?」
女子A「くっさ!」
加藤「エロ西、あいつそういえば・・・」
   由美子、気を失いばたっと倒れる。

******************************

   二段ベッドの上の段で目を覚ますセーラー服姿の由美子。
   壁に貼られた壁に貼られたボウイ「ラストギグス」のポスター。
   ピンポーンと呼び鈴の音。
由美子「えっ?」

   玄関のドアを開ける由美子。兼一が立っている。

由美子「もしかして・・・」
   由美子、台所の冷蔵庫を開ける。
   冷蔵庫の中に三個パックのプリン。

   プリンを持って階段をのぼる由美子。
   そっと部屋を覗く。
   下の段のベッドに兼一が腰掛けている。

由美子「 プ、プリン食べる?」

   ベッドに腰掛けてプリンを食べている兼一と由美子。
兼一「今日は兄ちゃんはおらんの?」
由美子「うん、修学旅行なの」
   兼一、プリンを食べ終える。
由美子「もう一個いる?」
   プリンの蓋を開けて兼一に渡す。
           プリンを食べる兼一。
由美子「私にも一口ちょうだい」
   と唇を兼一に押し付ける。
   驚く兼一。
兼一「な、なんか、一杯のかけそばみたいやな・・・」
由美子「そうだねー」
   満面の笑みで兼一を見つめる由美子。
   兼一を押し倒す。


   校庭の隅に掘られた穴。
   穴の前に置かれたピカピカの一斗缶。
   ビニールの包みを持って群がる中学生達。
   その中に加藤(15)と吉村(15)と中西(15)。
加藤「お前、何入れんの?」
吉村「俺?   昭和64年の一円玉」
   自慢げに一円玉を見せる吉村。
加藤「エロ西は? そのフィルムケース、何が入ってんの?」
中西「ふふ、これは俺の精子さ」
吉村「おい!  そんなもんタイムカプセルに入れんなよ!」
中西「でも、どうなるか気にならないか?」
加藤「馬鹿か、お前!」
中西「なんだと!」
   とフィルムケースを握って加藤に殴りかかる。
加藤「ちょっ!   お前、そんなん振り回すなよ!」
   逃げ回る加藤。

   兼一と並んで立っている由美子。
由美子「ねえ、何埋めるん?」
兼一「俺は、これ・・・」
   と懐から「一杯のかけそば」の本を取り出す。

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この記事を書いたセミプロ

Kitamatsu masataka

1980年生まれ。 座右の書は藤子不二雄「まんが道」。 代表作はカウパータイムスリップシリーズ。

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